「公募型のチーム研修」はなぜ好評だったのか?

一般的に本社人事部が現場側のニーズに即した研修を提供することはハードルが高いと思われます。事業が多岐にわたる大手企業であれば、なおさらです。

しかし、実際には現場側には、通常の業務や目標管理のサイクルの中では解きほぐしにくいテーマや、社員のモチベーションに関わる問題など、収益への直結が期待しにくい議題が放置されやすい状況があります。現場側では、研修的な予算が組みにくい状況も多く見られます。

今回は、本社人事部がBentoBoxを用いた公募型の制度を作ることにより、現場側の”前向きに議論したいテーマ”を掘り起こし成功に導いた事例をご紹介しつつ、現場側に潜在的にある対話や熟議のニーズについて考察を共有させて頂きたいと存じます。

BentoBoxの事例: 「イノベーション研修」を本社が準備し、現場から有志チームを公募

大手の金融機関 A 社様の本社人事部とご一緒し、 BentoBox を使った公募型のプログラム(「イノベーション研修」)を実施させていただきました。実施の狙いと概要は以下の通りです。

目的:
同じ業務上の課題認識を共有し、本研修プログラムに沿って議論することで、お互いに気づきを深め、イノベーションを生み出す創造性の開発を行う。

応募条件:
● 上記の目的に資する課題があること。
● 6名のメンバーを集めて、応募すること。
● 全員が社内の同じ組織に属している必要は無い。
● 実施可否判断は人事部で行う。

実施条件:
● 全員リアルで集合し、プログラム(1日)に全参加すること。
● 選抜後に、自チームが活用したいBentoBoxモジュールを選択すること。

応募状況 :
● お客様の徹底した周知が功を奏し、枠を超える応募がありました。 応募されたチームの中には、当初予測していた「1部門から6名で参加」というパターンの他に、「事業部内の隣の部門と合同」、や「同期入社の有志で」などのユニークな応募もあり、積極的な参画が見られました。
● 討議テーマとしては、事業やマーケティングのありたい姿をIBNF(“大胆な新しい未来を想像する”)モジュールで実施したり、UYB(“自分のバイアスを気づく”)モジュールを用いて組織文化や働き方を見直すなど、俯瞰性の高いものが多く選ばれました。

参加者コメント :
● 「本プログラムのような、お互いを理解し合い、全体を俯瞰した議論がしやすいプログラムは無く、大変感銘を受けた。こうした議論は、本来職場で自然と行われなければならないと思うが、実際には多忙なうえに、”常に責任の所在の明確化”が必要な議論の場が多い。」
● 「部署は違えど同様の業務を行い、同じ価値観・仕事観をもつ先輩後輩が集まり、各人の考え・経験をアウトプットし、共有した。テーマも自ら決めていくことで、練度が強く、納得感ある結果に結びついた。本研修で最終的に練り上げた結果の正しさに価値があるのではなく、プロセスに非常に価値があり、またモチベーションの向上に繋がったと実感している。」
● 「職場を離れて、建設的な議論ができる点が良い。飲み屋で話すと愚痴会になりがちだが、フラットに話しやすい環境で、業務時間中に話すことで、とても有意義で前向きな機械になった。」

参加された皆様の満足度はどのチームも高く、A社様にとって、このような新しい場づくりが現場側の潜在ニーズを掘り起こした素晴らしい事例となりました。

この事例から、皆様にとっても参考となりそうな点を、以下に考察させて頂きます。

弊社の考察

* 事業・ラインの現場には、本当はメンバーで意識合わせ、対話や熟議をしたいが、目標管理・PDCAサイクルの中では、そうした場を持ちにくいテーマが眠っている。
* そうしたテーマは、心理的安全性が高く、個々人の本音や多様性を尊重した対話の場の中で議論することが効果的である。「飲み会」は、後ろ向きの会話に流れやすく、世代が混じるとフラットに対話しにくい場合がある。
* 場づくりのポイントとしては、フラットに議論しやすい環境を作り、テーマを決めて、アウトプット目標をもって、対話・熟議を行うことが重要。
* 人事部などの本社予算で、参画意欲、問題意識の高いメンバーに、こうした場を提供することが、組織活性化の一つの手法となりうる。

おわりに

セルフナビゲーションで少人数で実施し、アウトプット目標のある議論を提供するBentoBoxは、A社様のような参画型の社内研修制度を組み立てるツールとしても有効です。